子どもマネー総合研究会

幼児教育は、お金をかけずに、目をかける

子どもを愛するがゆえに、子どものためにとあれこれやらせたくなるのは親心。小さい頃は、なかなか子どもの得意・不得意も見えにくく、子どもの夢も曖昧なので、何がいいのかわかりにくいのも難点です。しかも、そんな親の気持ちを刺激するように「鉄は熱いうちに打て」だとか、「はじめるなら、いま」「7歳までがポイント」といった宣伝文句が並びます。

私も、ご多分に漏れず、「絶対音感」「右脳教育」「幼児英語」などなど、結構やってしまいました。でも、成長した今となってみると、特に、極めて凡人レベルのウチの子どもには、そんなに必要なかったなぁと反省しきり。あるお母さまに、「もっとやらせてあげればよかったと、後悔するのはいやなんです。そんな後悔ありませんか?」と聞かれ、思わず、「いやー、逆にお金をかけすぎたと後悔しています」と苦笑い。みなさん、ほんとうに、何かをしてあげたい、でも何をしてあげたらいいのかわからないと悩んでいらっしゃるよう。

そこで、ご紹介したいのが、イタリアの教育学者・モンテッソーリの考え方です。モンテッソーリは女医さんで、精神に障害のある子どもたちの治療をしながら、子どもの教育法を導き出したという人です。(私は親ばかが高じて、モンテッソーリの教師養成所にも通ってしまいました)

子どもというのは、そもそも、自分を発達させてくれるものに向かっていくもの。それは、生まれたばかりの青虫が、食べやすい新芽に向かっていくのと同じくらい本能的なこと。つまり、子どもが素直に向かっていくもの、興味の対象こそが、その子を発達させてくれるもの。

モンテッソーリは、子どもの発達とは、興味のある対象で、集中して遊ぶことを通して成し遂げるものと考えています。遊び→集中→発達 これを何度も繰り返すことで、正しく、健全に発達していくというのです。……モンテの考え方では、「お仕事」→「集中現象」→「正常化」と呼んでいます。

具体的には、子どもが興味を持つものを与え、心ゆくまで遊ばせる。そのとき、その子は、その遊びに集中しているはず。その集中現象から目覚めたとき、その子どもはひとつの発達階段を登るというのです。

つまり、子どもが発達するためには、興味のあるものでなければなりません。しかし、お教室や教材のカリキュラムが、すべて興味のあるものとは限りません。

お母さんがするべきことは、お金をかけて幼児教室に通わせたり、高い教材を買って順番にやっていくことでもないような気がします。お母さんがするべきことは、ジックリとお子さんを眺めてあげること。そして、何に興味を示すのか探ってあげることではないでしょうか。

モンテッソーリの考え方には、「提示」をする役目があります。子どもだけですと、何をどうしたらいいのかわからないので、まずは先生や親がそのやり方を「提示」してあげるのです。

たとえば、車が大好きな男の子だったら、ミニカーが立派なツールになります。まずは、お母さまが、ミニカーを並べてみせます(これが提示です)。そもそもミニカーが大好きなお子さんですから、無我夢中でミニカーを並べてみせてくれるでしょう。このとき大事なのは、子どもの集中を止めないこと。「あら、もうお夕飯の時間だわ」と思っても、子どもが「もういい」「もう十分」というまで、ひたすら並ばせてあげるのです。そして、子どもが「やり遂げた」と顔をあげたとき、そのときの表情は、なんともいえない充実した表情になっているはずです。このとき、このお子さんは、ひとつ発達の階段を登ったと言えるでしょう。

発達の度合いが進んできたら、ただ並べるから、「大きいもの順」に並べるとか、「色の違い」で並べるとか、「車の仕事の性質」の違いで並べてみるとか、たくさんのルールを提示してやってみることができます。こうした遊びを通して、重さや色の違いを認識する感覚を学んだり、車の仕事を認識する社会性を学ぶことができます。同時に、ミニカーを持って、適正な場所に慎重に並べることは、手先の運動感覚を磨くことにもつながっています。

また、興味の対象は、モノだけとも限りません。たとえば、モノを投げて困るというお子さんは、モノを投げるという「行為」に興味があると思われます。そんなお子さんには、的を作って、そこをめがけて投げさせてみるとか、同じ力で投げて重いものと軽いものが、どんな違いで飛んでいくかを体験させたり、お母さまの工夫次第で、いろいろな提示が考えられます。

子どもの遊びは、ほんとうに、学びの宝庫なのですね。しかも、その提示は、他人の先生ではなく、お母さまがやってくださるのですから、子どもにとっても何よりうれしいことではないでしょうか。

お金をつかって、どこかに通わせていれば、何かをしてあげているという安心感があるのかもしれません。でも、興味のない教材で集中もせずに、仕方なくやっているようでは、子どもの発達に果して効果があるのか疑問です。親からしたら、お金を捨てているようなもの。お金をかけて他人任せにするのは簡単ですが、まずは、自分のお子さんをジックリ眺めてみてはいかがでしょう。きっと、一緒の時間が楽しくて、母も母として成長できる時間になってくれるかもしれません。

ジョアン・安部