子どもマネー総合研究会

絵本「かあさんのいす」が教えてくれること

お金を扱う絵本は、なかなかそうないような気がします。お金は、私たちにとって、あまりにリアルなため、絵本のお話しにはなりにくいのでしょうか……。

でも、数年前、ある本を見つけました。小さな女の子・ローザが、大きなびんにお金をためて、すてきなバラの大きな椅子を買う「かあさんのいす」というお話しです。

ローザは、おばあちゃんとおかあさんと三人で暮らしています。おかあさんは、ブルータイルレストランでウェイトレスをしています。少し前、三人の家は、火事にあい、家財のすべてを失ってしまいます。火災保険に入っていたかどうかは書かれていませんが、近所の人たちがピザやカーテン、食器類、ベッド、ぬいぐるみなど、たくさんのものを持ち寄って助けてくれます。

子どもというものは、コチョコチョと小さく説明的に描かれたページが大好きですね。このページには、たくさんの人が、ローザのおうちに、いろいろなものを運んでくれる様子が描かれています。娘が小さかった頃、「シャーリーおばさんは、赤と白のしましまカーテンを」と読めば、絵の中からしましまカーテンを抱えているおばさんを探し出し、「あ、これがシャーリーおばさんだ」なんて喜んでいましたっけ……。

三人は、みんなの助けを得ながらも暮らしていますが、でもまだソファも大きな椅子もありません。そこで、三人は大きなびんにコインをためて、すごくふわふわで、すごくきれいで、すごく大きな、バラのもようがついたビロードの椅子を買うことに。おかあさんは仕事でもらったチップを、おばあちゃんは節約できたときに、ローザもちょっとしたアルバイトでもらったお金を半分だけ、びんに入れます。

このお話しは、とっても現実的です。このおうちには、お父さんがいないこと。火事にあったり、おかあさんが仕事に疲れて帰ってきたり、びんのコインを銀行で紙幣に両替したり……。このリアルさが読む人を心配させたり、喜ばせたりしながら、ローザ一家の暮らしにどんどんと引き込んでいくのかもしれません。

からっぽだった大きなびんが、見事いっぱいになったページでは、娘も「わー」と目を見張り、読むたびに「重そうだね」「いくらあるのかな」「私だったら、何を買おうかな」と感想も進化していくようでした。

椅子を買った三人は、ひとつの椅子にぎゅうぎゅうと三人で一緒に座るのが大好きです。娘が小さかった頃、この本を読むときは、同じようにソファにぎゅうぎゅうと座って、ぴったりくっついて読んだものでした。

このお話しには、魔法も、怪獣も、願い事を叶えてくれる猫も出てきません。でも、ここには家族や身近な人の大切さ、日々の暮らしの愛しさ、そしてお金がなければ、手に入らない現実もしっかりと入っています。

この絵本には、続編があります。「ほんとに ほんとに ほしいもの」と「うたいましょう おどりましょう」です。

「ほんとに ほんとに ほしいもの」では、びんにたまったお金で、ローザが欲しいものを買っていいことになります。でも、ローザは、なかなか欲しいものを見つけられません。「ほしいけど、あのびんをからっぽにするほどほしいかな」と考えると、どれもそれほどでもないと思えてしまうのです。

この悩みは、ものにあふれる現代っ子と似ています。ローザは、最後にアコーディオンを買います。ローザの気持ちの変化は、ほんとうに欲しいものとは、自分が大切にしている世界観の中にあるものなんだということを教えてくれます。 欲しいものを見つける(世界観を認識する)というゴールに辿りつくまで、親に何ができるのか……。ローザのおかあさんが、さりげなく教えてくれます。

そして、「うたいましょう おどりましょう」では、おばあちゃんが病気のため、びんにお金がちっともたまりません。ローザは、お友達とバンドを組み、パーティーで演奏。お金を得るための行動をします。もちろん、ローザの楽器は、あのアコーディオンです。

この三部作を通し、ローザが、お金に関わりながら成長していく様がよくわかります。ローザは、お小遣い帳はつけていないよう(もちろん、つけないよりは、つけたほうがいい)。ローザは、紙幣博物館にも行ったことがないようです(もちろん、いかないより、いったほうがいい)。でも、ローザは、生活観として、「お金の力」を知っています。

お金とは、もちろん金銭教育として「学んだ」ほうがいいものですが(それが、子どもマネー総合研究会の存在意義!)、こうした日々の暮らしの中から、現実の生活観として「身につけて」いくことがゆるぎない礎になるはずです。そこは、親でしかできないところです。私の場合、職業柄、マネー関係の知識は、ちょっとはあるほうかもしれません。でも、生活者として、しっかりと地に足がついているかな……。子どものお手本になっているかな……。久しぶりにこの絵本を手にして、改めて考えさせられました……。

今日は、ひさしぶりに、大きくなった娘と、ソファにぎゅうぎゅうに座って、ぴったりくっついて、この絵本を読んでみようと思います。久々の絵本に、娘は、どんな感想を言ってくれるでしょうか…。娘のお金観は、少しは成長しているでしょうか…。楽しみです……。

ジョアン・安部

かあさんのいす
かあさんのいす

あかね書房 ¥ 1,470

ほんとにほんとにほしいもの
ほんとにほんとにほしいもの

あかね書房 ¥ 1,470

うたいましょうおどりましょう
うたいましょうおどりましょう

あかね書房 ¥ 1,470