子どもマネー総合研究会

復興増税って何?

ご存知の通り、消費税増税が決定しました。2014年4月に8%、2015年10月には10%と2段階で引き上げられるとのことです。 それにより私たちの生活にどう影響が出るか・・・ということに今後は更に関心が寄せられると思います。

そして、どう影響してくるかという点では、復興増税も同様です。

「復興増税」…憶えてらっしゃいますか?

昨年2011年12月に「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」が交付されました。

ここ最近は消費税の話題が多くお忘れの方もいらっしゃるようですが、この通称「復興増税」が実施されるのは2013年1月から、そう来年からです!!

この復興増税により、法人税・所得税および個人住民税を軸として臨時的な増税が行われます。ということで今回は、私たち個人にかかわる復興増税の主だった内容について触れてみます。

復興増税には個人にかかわるものとして「特別復興所得税」と「個人住民税」があり、個人住民税については、2014年度から2023年度分(10年間)の各年度分の個人住民税の均等割が年間1000円引き上げられることになります。復興増税は2013年からですが、2013年分の所得に対しての住民税になるため、その翌年からのスタートです。

また、私たち個人が会社に勤めて給与をもらったり、事業を営んだりして得た所得には 税金が課せられ、所得税として納税しています。復興特別所得税とはその所得税に2.1%を乗じた額となり、2013年から2037年まで課せられることになります。

※たとえば…

年収500万円(税込)のサラリーマン世帯で、年間の所得税が100,500円(注1)の場合

100,500円 × 2,1% = 2110円

となり、復興特別所得税としては年間2110円の負担増となります。

(注1) 計算の前提条件

  • 夫:40歳以上、妻:専業主婦、小学生の子2人の4人家族
  • 控除は社会保険料控除・配偶者控除・基礎控除のみ
  • 社会保険料は東京都全国健康保険協会保険料額表(厚生年金は一般)を採用
  • 雇用保険料は一般の事業の被保険者負担率(4/1000)にて計算
  • ご自身またはご主人がサラリーマンなどの給与所得者で、年間の所得税がわからない… という方は、毎月の給与明細に記されている所得税に、(×2.1%)で計算してみると、どの位増えるのかをイメージできます。そうして計算してみると、大きな負担とは言えないかもしれません。

    また、様々な事情で所得税が非課税となっている場合(例えば非課税である遺族年金のみで生活されている方)は、復興特別所得税も課税されません。

    ただし所得税は、これら給与や事業による所得のみではないという点に注意が必要です。

    所得税の対象になっているものは他に預貯金などの利子による利子所得や、株式の配当金による配当所得などがあるからです。教育資金準備のために、様々な金融商品を活用されている家庭もあると思います。つまり、そういった金融商品の税率も複雑に変わってくることになります。

    例えば預金の利子にかかる税率は、現状では20%(所得税15%・住民税5%)ですが、復興特別所得税を合わせた税率は20.315%(所得税15.315%・住民税5%)となります。この 利子所得にかかる税金は源泉徴収されるので、私たちが申告する必要ありませんが、払い出しの際には利子で増えた分から差し引かれて、納めていることになります。

    上場株式や公募投資信託の配当金や売買益にも所得税が課せられているため、現在の10%(所得税7%・住民税3%)であるものが、10.147%(所得税7.147%・住民税3%)となります。

    またそもそも現在の10%という税率は時限措置として設けられたもので、2014年からは税率20%(所得税15%・住民税5%)の本来のものに戻る予定なので、その際に復興特別所得税を加えた合計税率は20.315%(所得税15.315%・住民税5%)となります。

    *下記の表をご参照ください

    合計税率

    保有している金融商品の場合はどうなるかを、金融機関や担当者に確認しておきたいところです。分配型の投資信託をされている方は少なくないようですが、「あれ?何で分配金が減ったのだろう?」とならないようにしたいですよね!

    そして忘れがちなのは保険商品です。教育資金準備としての学資保険や養老保険の満期保険金、終身保険の解約返戻金なども一時所得として所得税の課税対象になるからです。

    *一時所得は下記の計算にて求めます

    総収入金額(満期保険金) - 支払金額(払込保険料) - 特別控除額(50万円)

    この一時所得金額の1/2の金額を、給与などの他の所得に算入し税額を計算し、その額に2.1%を乗じた額が復興特別所得税となります。

    ただ、昨今の貯蓄タイプの保険の満期保険金や解約返戻金が、所得税の課税対象になることは、稀と言われています。上記の計算をした際に、特別控除の50万円を上回る利益が出る商品が少ないことが理由ですが、この特別控除額は、年間の一時所得の金額に対しての控除となるため、同じ年に複数の満期保険金や解約返戻金を受け取った際には、課税対象となることもあり注意が必要です。

    また、同じ貯蓄タイプの保険商品でも、課税方法が違う種類があります。期間が5年以下の一時払い養老保険の満期保険金や、これに類似した商品(一時払い終身保険など)を5年以内に解約した場合の返戻金は、払込み保険料との差益に対して課税され、源泉徴収されます。

    この差益に対する課税は20%(所得税15%・住民税5%)の源泉分離課税です。来年からの特別復興所得税が導入されると税率は20.315%(所得税15.315%・住民税5%)になります。

    という訳で、生命保険の課税について、下記に例を挙げてみました。

    *来年2013年に満期や解約があったと仮定

    《学資保険が満期の場合》

    ・満期保険金300万円 払込保険料270万円
    300万円 - 270万円 - 50万円 = -20万円 ← 課税対象にならない

    《一時払い終身保険を5年で解約した場合》

    ・解約返戻金305万円 払込保険料300万円 305万円 - 300万円 = 5万円
    5万円 × 20.315% = 10157円 ← 源泉分離課税…返戻金の5万円から源泉徴収

    《学資保険が満期で、一時払い終身保険を10年目に解約した場合》

    ・学資保険:満期保険金300万円 払込保険料270万円、 ・一時払い終身保険:解約返戻金800万円 払込保険料765万円
    (総収入) 1100万円 - (払込保険料総額) 1035万円 - 50万円= 15万円(一時所得)
    15万円 × 1/2 = 75000円 ← 他の所得にこの金額を合算する

    このように、満期や解約で受け取る時期によって課税の方法に違いがあり、その結果受取り額にも違いが生じます。貯蓄を加味して保険を検討するのであれば、商品の特性だけではなく税制も知っておく方がよいですよね。

    復興特別所得税は、各所得から納める税金が少しずつですが増えていくことになります。それは、収入が増えない限り使えるお金が減ることにつながります。例え収入が増えたとしても、ここ数年は控除の額や種類が減ってきたり、社会保険料の負担も増えつつあるため、使えるお金が増えたと実感することは無いかもしれません。

    この復興特別所得税は臨時的な増税ですが、来年から25年間も継続される予定です。 今の子ども達が大人になるまで続きます。

    これから就学される子どもの居る家庭では、まるまる教育費がかかってくる期間となります。また、今の30歳代後半以降の方がこの25年が過ぎた頃には、現役を終えた老後の人生がやってきます。ですので、どういう物事に対してどういう風にお金を使っていくかを、しっかりとファイナンシャルプランニングしていくことが、今後益々重要になってきます。そして、子どもは大人の言動をしっかり見ているように、親のそういうお金の使い方を見て育つと思います。

    その子ども達が将来大人になり社会に出た時、公的年金などの社会保障費だけでなく、こういった増税により使えるお金が少ないことにガッカリすることなく、子ども達それぞれの価値観の中で望む生活を送ってほしいです。

    そのためにも金銭教育は大切であり、子どもマネー総合研究会では今後もその機会を提供するべく、活動をしていきたいと思います。

    大澤 亜紀子

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