子どもマネー総合研究会

男性育休取得率を2030年に85%へ!

昔のパパママからすると随分と子育てがしやすくなってきたように思いますが、出生数減少のトレンドに変化はなく、ここ数年、少子化のスピードが加速しています。2023年末に政府は、次元の異なる少子化対策の実現を目指して、「こども未来戦略」を決定しました。

この中で今回は男性育休についての現状と今後の取り組みについて取り上げてみたいと思います。

2030年には85%目標!

こども未来戦略方針では男性育休取得率の目標が挙げられています。

<男性の育児休業取得率の目標>
2025年 公務員85%(1週間以上の取得率)、民間50%
2030年 公務員85%(2週間以上の取得率)、民間85%
こども未来戦略方針等について 厚生労働省参考資料より

企業などで働く男性の育児休業の取得率は、2022年度雇用均等基本調査によると17.13%と過去最高、前年の13.97%より3.16%増加しています。しかし、こども未来戦略の目標からすると、厳しい数字となっています。

大企業では進む男性育休

2023年に従業員が1000人を超える企業での調査によると、調査に答えた1472件の企業での男性育休等取得率は46.2%と、企業規模の大きい会社での取得率は全体の取得率と比べて高いようです。

また内閣人事局の発表によると、2022年度に育児休業を取得した男性の国家公務員(一般職・特別職)の割合は43.9%で、過去最高だった21年度の34.0%を9.9%上回っています。

大企業と国家公務員の男性育休取得者は全体と比較すると大分高くなっていることがわかります。

国家公務員の育児休業の取得状況

令和6年1月19日 内閣官房内閣人事局報道資料より

中小企業で進まない理由は?

一方、中小企業では日本商工会議所などが2022年に全国の中小企業およそ6000社を対象に行なった調査では、「専門業務や属人的な業務を担う社員の育休時に対応できる代替要員が社内にいない」と回答した企業が52.4%と半数を超えました。「採用難や資金難で育休時の代わりの要員を外部から確保できない」が35.7%、「男性社員自身が取得を望まない」は28.8%となっています。

中小企業での男性育休取得率を上げることが全体の取得率アップには必要ですが、中小企業では代替要員の確保が難しいことや収入が減ることが取得率を下げる原因となっているようです。

日本の育児休業制度は世界一!?

ユニセフ(国連児童基金)の報告書「先進国の子育て支援の現状(Where Do Rich Countries Stand on Childcare?)」(令和3(2021)年6月)では、経済協力開発機構(OECD)及び欧州連合(EU)加盟国を対象に、各国の保育政策や育児休業政策を評価し、順位付けしています。このなかで育児休業制度では1位となっています。日本は、父親の育児休業が世界で最も長いことからこのようなランキングとなっています。

しかし、総合評価では21位となっており、項目別での順位は下記の通りです。
・育児休業制度:1位/41か国中
・就学前教育や保育への参加率:31位/41か国中
・保育の質:22位/33か国中
・保育費の手頃さ:26位/41か国中

世界一の制度があるにも関わらず、制度を活かせていない人が多いというのが現状のようです。このような状況の改善を期待するものとして、政府は今後3年間を集中取組期間として「加速化プラン」なるものを実施していくこととなりました。

この中で育休に関するものでは、
・中小企業に対する助成措置として代替社員への応援手当支給への助成拡充
・産後の一定期間に男女で育休を取得することを促進するため給付率を手取り10割相当に
・育児時短就業給付(仮称)創設 短時間勤務で手取りが変わらないよう給付
などがあります。

男性育休取得率を数字が上げるだけで出生率が上がるわけではありませんが、世界一と言われる日本の育児休業制度を、一部の人だけでなく、利用したい全ての対象者の方が利用でき、子育てのしやすい社会へ変わっていくことを期待したいと思います。

参考
子育て支援策 新報告書 日本の結果についてのコメント (unicef.or.jp)
コラム4 我が国の育児休業制度は世界一!?男性の育児休業の変遷と背景 | 内閣府男女共同参画局 (gender.go.jp)
こども・子育て政策|岸田内閣主要政策|首相官邸ホームページ (kantei.go.jp)

さいぐさ ゆきこ 

子育て・教育資金アドバイザー

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