子どもマネー総合研究会

「東京都金融・金銭教育協議会」レポート<1>(学校教育編)

平成22年12月22日、中央大学高等学校小ホールで「東京都金融・金銭教育協議会」が行われ、参加してきました。東京都では、「金融教育研究校」が設けられ、指定された各校がそれぞれ工夫した金銭・金融教育を行っています。その現場のお話、そして、アメリカにおける金融教育のお話を聞くことができました。とても興味深く、考えさせられることもあり、とても有意義な時間でした。

「金融教育指定校」の世田谷区立松原小学校の校長先生、中央大学高等学校の先生から金融・金銭教育に学校として取り組む現場のお話を聞きました。

最初に松原小学校の校長先生。道徳の授業を使って、物の大切さや無駄遣いについて話し合ったり、社会科の授業で働くことについて学習を進めたそうです。ユニークなのは、6年生の社会科の授業で「聖武天皇と奈良の大仏」と題して、大仏造営という国の事業にどれだけのお金がかかったかを学んだということです。個人の労働や消費は国の成長につながります。それは現代も通じることで、とても面白い試みだと思います。保護者対象では、家庭教育学級でセミナーを行い、おこづかいについて意見交換したり、「校長室便り」という配布物で金銭教育について紹介したりして、家庭や地域との連携を図っていました。やはり、家庭との連携が大切ですね。

校長先生のおっしゃっていたことで印象に残ったお話があります。金融教育の指定校として金銭教育に取り組むまでは、お金の話についてどうしても抵抗感があったそうです。工場見学に行っても「これを作るのにいくらかかるのか」というようなお金に関わる質問はタブーだったと。なんとなく分かりますね。でも、よく考えてみれば不自然なことです。私たちの店で買うものは、工場で働く多くの人によって生み出されたものです。物にどれだけの人の労働やコストがかかっているのか、それを知ることは物を大切にすることにつながるはずです。それは、農産物や他の食物などにも共通します。

次に中央大学高等学校の取り組み。3年生の社会科で、日本の金融政策や為替レート、世界経済の歴史について積極的に学んでいます。生徒一人一人が、それぞれのテーマについてレジュメを作成し発表を行います。たとえば「為替レート・プラザ合意とアジア通貨危機」「バブル経済」というテーマです。発表者以外の生徒は発表についてのレポートを提出。これを一年で20回以上行うというのですから驚きです。パネリストの横浜国立大学教育人間科学部の西村教授も「大学でもここまでレポートは出さない」とおっしゃってました。日本銀行、東京証券取引所に見学へ行ったり、日本銀行の出前講座なども授業に取り込んでいます。このような金融教育により、生徒達は世界経済の中の自分を意識し、社会とのつながりを意識するようになっていく様子が見られたということです。

協議会の最後に「金融教育という枠を超えて学校のあるべき姿と重なる」という言葉が聞かれました。この協議会の参加者が学校関係の方が多かったのでこのように言われたのだと思いますが、この言葉は「学校」だけでなく「家庭」にも通じるような気がします。

今回の協議会レポート①学校教育編はここまでです。次回は、アイオワ州立大学のK.Hira教授の特別公演についてレポートしたいと思います。世界経済レベルで見た金融教育についてのお話でとても興味深いものでした。

倉林 美和

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