せっかく行く海外だから、海外で為替実体験
コラム「子どもに使うお金」第9回に、小川研究員の「経済的格差が体験格差を生み、さらに、年収格差を生んでいる!?」があります。親の経済的格差が、子どもの体験格差を生み、それがさらに子どもの将来の年収格差につながっているのでは、という親としてはドキリとする内容です。子どもには、いろいろな体験をさせてあげたいと、親はそもそも思っているものですが、中でも体験の重要性を感じるのは海外旅行ではないでしょうか。海外に出ると、テレビや映画、英会話教室でも、そう感じることができない、異なる文化を肌で体験することができるからです。
海外では、親子でいろいろな体験ができますが、中でも「して、よかった!」と、実感するのが為替体験です。これだけは、海外ならどの国でも体験することができます。
たとえば、我が家の場合は、インドネシア・バリ島に旅行したときのこと。ホテルには、笑顔のステキなホテルマンがおりました。彼は、日本語はもちろん、何ヶ国語もあやつります。彼個人は、恐らく、というか、絶対に、私なんかより優秀なはず。でも、恐らく、年収は私のほうが何倍も高いはず。それは、私がすごいんじゃなく、単に為替が円高だからです。円から現地通貨に両替すると、現地では、それはそれは大きな金額になります。大して優秀でもない私でも、ちょっとお金持ちになった気分になります。
娘にそれを話すと、とっても不思議そうでした。案の定「どうして?」「どうして?」の嵐。子どもに為替の話しは難しく、どう説明していいか悩みましたが、為替とは、要は、そのお金が欲しいかどうかのバランス。バリ島のルピアと日本の円。ルピアより円のほうが欲しい人たちが多いと、円の値段が高くなると説明。
が、しかし、「円が高くなるってどういうこと?」と、娘。「円が欲しい!」「あげない!」「欲しい!」「あげない」「じゃ、交換するルピアをもっと持ってきたら、円をくれる?」「いいよ~」ってな具合で高くなるのよと説明し、「高くなれば、円でたくさんのルピアが両替できるから、私たちはたくさんのお買い物ができるのね」と、ワタシ。「すごい! 日本の円は、人気者なんだね」と、娘。「そうねー。日本は戦争もしていないし、一応は平和だし、円なら持っていても安心と思うのかもね」と、ワタシ。「日本人でよかったね」と、娘。思いがけない結論に至ったこともありました。
為替の感覚をつかんでしまえば、あとは結構、楽しめるもの。「10万ルピアは日本の1000円だけれど、こんなにモノが買えるんだね」とか、「ジュースが、日本の約半分だね。これは、為替の力だね」とか、「あのお姉さんはママより若くてきれいだけれど、為替のお陰でママのほうがお金あるかもね」とか、関係ないでしょって話題もありますが、為替というものを現場でヒシヒシと楽しく実感できます。
そして、娘は、美しく真剣にバリ舞踊を踊る小さな女の子を見て言いました。「あの子は、あんなにがんばっているね。バリの人が、みんながんばって、世界中のみんながルピアを欲しいと思ったら、円よりルピアのほうが高くなってしまうかもね」と娘。「そうねー。10年後は、あの子が日本に来て、秋葉原とかで、『安―い!』なんて言って買い物しまくっているかもね。日本も、あなたもがんばらないとね」と、ワタシ。こんなときは、ほんとうに海外に来てよかったなーと、母は実感いたします。
このほかにも、海外では、市場価格とホテル価格の違いを感じたり、ねぎったり、客引きされたり、押し売りされ、値段交渉の末タクシーに乗ったりと、日本ではなかなか味わえない「お金」を体験をすることができます。また、ここ数年、バリ島には、数多くのロシア人の方々が旅行に来ています。かつて、バリ島といえば、ヨーロッパ人やオーストラリア人が目立ったものでした。旅人の国の編成から、世界情勢の変化も感じることができるようです。「どうして? どうして? どうしてロシアの人が多いの?」と、娘からは、またまた質問攻めにあいましたが、そのお話はまたいつか……。
経済格差が体験格差を生む、お金をかける体験だけが体験ではなかろうにと思いたいのですが、海外旅行などには、どうしてもお金がかかってしまいます。せっかくかけるお金ですから、いろいろ体験して来たいものです。
ジョアン・安部