子どもマネー総合研究会

重い教育費負担、その実態は?

重い教育費負担、その実態は?

「教育費の負担が重い」「これからの教育費が心配」と思っておられる方は多いでしょう。7月に発表されたメットライフ生命のアンケート調査でも、76.7%の方が「教育費は高いと思う」と答えたとのことです。

しかし、実際の教育費の負担感は、子どもの進路や家庭の状況で異なってくるはずです。わが家の教育費負担はどれほど重いのか確認してみましょう。

「教育費が高い」と思う人は76.7%

2024年7月14日にメットライフ生命保険株式会社から発表された「全国 47 都道府県大調査 2024~社会情勢の変化と将来への備え~」によると、「教育費は高いと思う」と答えた人は、76.7%に上ります※。また、同調査では、「子ども・孫の教育に必要だと思う金額」についても調査しており、2024年の平均額は1,183万円。2023年は1,104万円だったので大幅に増えてもいます。
※調査対象は、全国の 20 代~70 代までの男女 約14,000人のうち、「既婚かつ同居末子が大学以下の家庭」

「うんうん、確かに高いよね」とうなずく方も多いと思いますが、さて、1,183万円という金額についてはどうでしょう。「そんなにかかるの!」という方も、「それくらいでは足りないのでは?」と思う方もいるかもしれません。

進路は子どもによって違い、国公立か私立か、学部や学科等によってもかかる学費は異なります。イメージする進路によって、必要と思い描く金額は変わってくるでしょう。

高校までの教育費は、オール公立で574万円、オール私立で1,838万円

それぞれの子どもにかかる教育費は、進路(私立・公立、学校の種類、学部・学科等)によって異なりますが、文部科学省の「子供の学習費調査」から、進路ごとの平均的な金額をみてみましょう。

表1 幼稚園から高校まで15年間の学習費総額

幼稚園から高校までに学習費の総額(学校外教育費を含む)は、オール公立(ケース1)の場合で574万円、オール私立(ケース4)の場合で1,838万円となっています。オール私立の場合、オール公立の3倍以上の金額になるのですね。

4年間で国立大学は243万円、私立理系だと542万円

では、もっとも教育費負担の重い時期である大学にかかるお金はどれくらいでしょうか。表2に、国立大・私立大の大学納付金に関するデータをまとめてみました。

表2 大学の納付金額

「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令」・文部科学省「令和5年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金等平均額(定員1人当たり)の調査結果について」より筆者作成

大学在学中の4年間(医歯学部は6年間)の大学納付金を、試算してみたところ、4年間の大学納付金は、国立大学は243万円、私立理系だと542万円になりました(表2)。私立大学に進んだ場合は、学部や学科によって、納付金額に大きな差が生じます。特に、6年制の医学部や歯学部の場合は、6年分の納付金は2,354万円と桁違いに重い教育費負担となります。

また、自宅を離れて進学した場合には、家賃や生活費などの仕送りも生じます。仮に月額10万円の仕送りをしていたら、4年間でさらに480万円の費用が必要になります。

幼稚園から大学まで、817万円~4,193万円?

ここまで見てきた、教育費データで合計額を出してみると、高校までオール公立、大学は国立の場合は、合計817万円、オール私立で大学が私立医学部だと4,193万円になります。進路選択によって、かかる教育費は5倍以上も変わってくるのですね。

なお、高校までがケース2(幼稚園は私立、高校までは公立)で、私立文系に進んだ場合の合計額は1,030万円、ケース3(幼稚園・高校は私立、小学校・中学校は公立)で、私立文系に進んだ場合の合計額は1,192万円になります。

手当や支援等が受けられれば、教育費負担は軽くなる

また、教育資金の負担感は、家計の収入面が改善されれば、軽くなります。

児童手当やいわゆる「高校授業料の実質無償化」制度、給付型(返済不要)の奨学金や学費免除などの支援制度などが受けられれば、教育費の負担感は少なくなるでしょう。しかし、国や自治体等の支援制度は所得金額などの条件があります。わが家はどんな支援制度が利用できるのかも、早めに確認しておきたいですね。

なお、児童手当は、2024年10月から所得制限が撤廃され、支給対象も高校生までになるなど、制度が拡充されます。

表3 児童手当の額

進学先・進学希望先の学費を早めに確認、支援制度も確かめよう

あなたの「教育費負担額」のイメージは、どれくらいの金額でしょうか?進路がはっきりしない、子どもが小さいうちは、将来の教育費は「負担が重そう」という漠然としたイメージになりますね。子どもの進路がはっきりしてきたら、「この学校に行くなら」「このコースを選ぶなら」とかかる費用を確かめて、イメージだった数字を、具体的な金額に見直していきましょう。

また、子育て中に受けられる国や自治体などの支援制度に、わが家が対象になるかも随時チェック。国や自治体などの支援制度は、拡充されることもあれば、縮小されることもあります。途中から支援の対象となるのならよいのですが、対象外となる場合は教育資金プランも練り直しが必要になることもあります。制度の動向にも気を配っておきましょう。

ファイナンシャル・プランナー 大林香世

大林 香世 (おおばやし かよ)

ファイナンシャルプランナー 、子育て・教育資金アドバイザー
1999年CFP資格取得。教育系出版社、FP会社勤務を経て、2000年より独立系ファイナンシャル・プランナーとして活動中。マネー系ホームページ、新聞等へのコラム執筆、FP向けテキスト・問題集の執筆・校閲、セミナー講師、個人相談などの活動を行っている。

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