リセット!?留学
40~50代以上の年齢の方が、「留学」という言葉を聞くと、どこかセレブな響きを感じるかもしれません。その年代の方が、中・高生だった頃に、私費留学して高校を卒業するなんて言ったら、現在以上に高額でしたし、海外の教育を子どもに受けさせたいと考える家庭は多くはありませんでした。実業家や土地の有力者であったり、個人病院の子どもであったり、サラリーマンの一般家庭では手の届かない世界の話だったからです。
ですから、留学というと、お金持ちの世界の話じゃないのと、思いがちです。また、人生の全てをかけて学ぶ、志を持って渡航するというくらいの気負いがあったように思います。ところが、昭和、平成と移り変わるうちに、昨今の留学事情は大きく変化してきました。
現在でも、国内の高校に通学するよりも費用がかかるので、しっかりした資金計画は必要ですが、セレブでなくても留学を実現できるようになり、昔よりもハードルが低くなりました。 子どもたちだって、自分なりの志を持って留学しています。でも、人生の全てをかける……というのではないように思います。それは決して、考え方が軽くなったというのではありません。伝統や文化、気候風土の異なる異国に単身飛び込んで教育を受けるという、勇気や思い切りの良さが必要なことは現在も昔も変わりはありません。
ただ、世界の情報は、インターネットやマスメディアによって、映像とともに手に入る時代になりました。昭和の頃とは比べ物にならないほどの情報量があるということも、留学に対する考え方を変化させてきたといえるでしょう。
そんな変化の中で、学校へ行けなくなってしまった子どもたちの、新たな進路の選択として留学が考えられるようになってきました。いじめや日本の教育システム、教育方針などが問題になって、起こることが多いといわれているのが不登校です。また、みんながみんな同じようにできなければならないという既存の枠とか、特出した個性を否定されたりすることに、「そうなのかな」と疑問を感じたりする子どもの多くが不登校になりがちだともいわれています。国内の小・中学校そして高校で、その悩みと直面している家族は少なくありません。国内で学校を変えたとしても、根本的な解決ができていないケースも多く、再び不登校を繰り返すことも否めません。そこで、日本とは異なる教育環境で学ぶという留学という選択肢が注目されました。
まず、欧米の多くの学校では、個性を重んじ、個々に違いがあることを認めています。中学校に当たる学年では、日本同様に各教科を総合的に学びますが、単に学校の成績だけでなく、芸術面、運動面、人間性など、多角的な見方で評価されます。生徒一人ひとりの個性や能力を見い出し、伸ばしていく指導をしてくれます。高校では選択科目が多く、グラフィックデザイン、作曲など、芸術系科目の幅が広く、進路を考えながら自分の学びたい科目に取り組みことができるので、将来の可能性、選択肢もぐんと広がります。
ちなみに、娘が留学していたニュージーランドの学校(中・高一貫校)でも、写真、演劇、園芸のような選択科目がありました。自分のやりたい科目を受講したい場合は、現地の子どもたち同様の語学力さえ身につければ可能だということで、努力することも苦にならなかったようです。目標に向かって何かをする、そんなモチベーションが自然に身についてくるようでした。
そういう教育環境ですから、不登校の子どもたちにとって留学は大きな転機、リセットして再出発する新たな進路の選択肢といえるのです。国内でくすぶっていた自分とは違った、勉強すること、好きなことに夢中になる楽しさを知ることができます。留学経験によって、自立心や自信を身につけていくことができます。もちろん、甘えてばかりいれば、方向を見誤ることにもなりかねません。家族や留学エージェント、そして留学先のインターナショナルの先生が、子どもを認め、心の支えとなることが大切です。 リセット!?留学は、いいチャンスだと、捉えてほしいものです。
緒方 昌子