目の前のお金と将来のお金~年金について~
ここ最近、公的年金がらみのニュースを良く聞きます。 厚生労働省は厚生年金の支給開始年齢の引き上げについて、現行では、60歳開始の厚生年金を3年ごとに1歳ずつ引き上げ、65歳開始にする制度に対し
1.2年ごとに前倒しして、65歳まで引き上げる
2.3年ごとのペースは変えず、68歳まで引き上げる
3.2年ごとのペースで68歳まで引き上げ1.と2.を同時に実施する
という3通りの案を社会保障審議会年金部会に提示しました。 まだ決定ではありませんが、仮にそうなった場合の影響はかなり大きいと思います。
60歳でリタイアして68歳年金開始だとしたら、8年間の無収入の期間が発生します。 例えば、夫婦で月25万円の生活費がかかるとしたら、8年間に2400万円。 退職金や貯蓄で8年間をカバーできたとしても、 今の私たち世代は、公的年金の受取額が生活費を下回る可能性もあるので、 その先の備えも必要です。
高齢者雇用の確保も同時に議論されているようですが、雇用は景気によっても 状況が変わるので、思惑通りに行くのかも心配です。
いずれやってくるリタイア後の生活を考えるうえで、どうすることが望ましいのでしょうか。
まずは、社会保障全体からとらえてみると… 国立社会保障・人口問題研究所によると 2009年度の社会保障給付は2008年度と比べて6%も上がり、99兆8507億円。 要因としては、まずは高齢化による年金、医療費、介護費用の上昇が大きいところですが、 不況による失業や生活保護の給付の上昇も要因のひとつとなっています また、財源に関しても
ことから、保険料収入は3.5%減の55.4兆円。
保険料収入<社会保障給付
財源不足は深刻な問題で、厚生労働省内でも「厚生年金保険料の上限上げ」 の検討が開始されたように、保険料をたくさんとるか給付額を下げるかしないと、 制度を維持できない状況です。
じゃあ、年金に加入しないほうがいいかというと、今後給付額が下がったとしても 同じくらいの給付を民間の保険会社の個人年金で得ようとした場合、 通常はかなりの保険料となります。
万が一の際の遺族年金や障害年金の機能も兼ね備えていることを考えると、 制度そのものはメリットもたくさんあります。 ただ、かつての親世代のように、リタイア後の生活設計をするにあたって 公的な年金や企業退職金だけを当てにするのはリスクが高そうです。
私が日ごろクライアントにお伝えしている2つの事柄があります。 ひとつ目は、今の段階で年金制度そのものを疑う必要はないけれども、 それだけで老後をまかなおうとせず現状としっかり向き合う姿勢が大切、 ということです。 自分の加入している年金の種類を把握し、 リタイア後の生活をどれくらいカバーできるかを明確にすること。
もし不足する場合は今からどう備えるか、戦略を立てること。具体的な戦略としては
などですが、キャリアプランを見直す、というのもありえると思います。
例えば子どもと過ごす時間を減らしてまで目いっぱい働くのではなく、長く無理なく働けるような キャリアを考えてみるというのもひとつの考え方でしょう。
もちろん、そうしたところで更なる制度変更の可能性もありますが、 一度全体を見通して整理しておくことで、軌道修正もしやすいものです。
そしてふたつ目は、日本の状況を知っておくこと。 少子高齢化の現実と向き合い、今後どんなことが起こりうるかも考えてみましょう。 今、パート社員の厚生年金加入について取りざたされていますが 目先の負担が増えることで将来の年金が増えるということも理解する必要があります。 保険料や税金が上がることで自分の生活にどのように影響するのかを考えておくと、 今後の政治に対しても受身で不安になるだけではなく どんな政策を支持するのが私たちの将来のためになるのかが明確になると思います。
将来について、自分だけではなかなかイメージがわきづらいという方は ファイナンシャル・プランナーにご相談ください。 これから起こりうるライフイベントの支出を確認し、 リタイアまでにどれくらいの貯蓄ができるのかをシミュレーションしたり 年金額の試算を行いリタイア後の生活費とのギャップがないかを把握します。 その上で、もし対策が必要な場合は今からどんな準備をしたら良いのかを提案します。 漠然とした将来の不安。そんなモヤモヤを晴らすためにはおすすめの方法です。
波柴 純子