子どもマネー総合研究会

奨学金と教育ローン

奨学金と教育ローン

教育費の準備について考える時、貯蓄や学資保険のように貯めて備えることは大切です(豊田研究員のこちらのコラムをご参照ください。 )。 ただ実際に必要となった時に、教育費として貯めていた資金では足りないということが起こるかもしれません。他の預貯金やその時の収入などでやりくりできれば良いのですが、それも困難な時はどうすればよいでしょうか。そのような時のために、「奨学金」や「教育ローン」の活用という方法があります。

奨学金とは、学力や能力を十分に備えている学生が進学の意思はあるものの、経済的な理由で進学が困難な時に、資金を貸与・給付する制度です。奨学金制度を持つ団体は、地方公共団体や高校・大学等各種学校、民間団体や個人等で約3,900団体存在し、その中で最も利用されているのが日本学生支援機構の奨学金です(平成25年 奨学金事業に関する実態調査結果 日本学生支援機構より)。

教育ローンには、銀行など民間の教育ローンと日本政策金融公庫の国の教育ローン(教育一般貸付)があります。奨学金の中には小中学校でも対象の制度を持つ団体がありますが、多くは中学卒業後に進学する学校(高校や大学、各種専門学校や大学院など)で学ぶ費用が対象であり、この点は教育ローンも同じです。

奨学金と教育ローン、どちらも教育資金として活用できる制度ですが、奨学金は学生本人が給付や貸与を受けるもの、教育ローンは親が教育費として借りるという点が大きな違いです。また、奨学金や教育ローンを取扱っている団体の制度や、金融機関の商品それぞれについてみてみると個々に違いがあります。そこで今回は、最も利用者の多い日本学生支援機構の奨学金と、国の教育ローンである日本政策金融公庫の教育一般貸付についてお話致します。まず下記の表にまとめてみました。

日本政策金融公庫の教育一般貸付

教育資金には、授業料や入学金はもちろん、他にも受験料や学生生活を送るうえで必要なパソコンなど、さまざまなものがあります。そして進学する前の早い段階で必要となるものが受験料です。その後の結果で合格となれば、入学金や前期の授業料もなるべく早めに納めることとなり、入学前までに大きな資金が必要になります。

国の教育ローンはいつでも借りることが可能なので、必要な時期に間に合うように手続きができます(入学金の場合は合格通知書などを公庫が確認した後に振込みとなる)。奨学金は入学後の費用として支給される制度です。予め必要となる時期と金額を整理しておくことで、教育ローンと奨学金のどちらを利用すればよいかが分かってきます。ちなみに、国の教育ローンと日本学生支援機構の奨学金は併用も可能です。

ただ、そうやって資金の準備に目処がついたとしても安心はできません。親が債務者となる教育ローンでは親に、貸与型の奨学金では子どもに、それぞれ返済義務があるからです。ちなみに日本学生支援機構では、海外留学向けの給付型以外いずれも貸与型です。

奨学金の返済期間は借りた期間により決まります。例えば日本学生支援機構の第二種で、月額10万円を大学4年間受給するとして計算すると総額480万円となります。返済時の金利を2%として計算すると(上限金利は3%)、卒業後20年間毎、毎月約2.5万円を返済することになります。

国の教育ローンの場合、子ども一人につき350万円までが借入限度額です。そして借入後の翌月または翌々月から親が返済していくことになります。もし限度額の350万円を返済期間15年として借りた場合、毎月の返済は2.28万円となります。(平成28年1月時点の金利2.05%で計算)。

奨学金を子どもが将来返済する場合も、親が教育ローンを返済する場合も、繰り上げ返済をしない通常の支払いでは長い期間支払うこととなり、返済中の生活費もかかることを考えると負担になる場合もあるかもしれません。国の教育ローンの場合は、子どもの在学中の返済額を利息のみとすることも可能です。

日本学生支援機構の平成24年度学生生活調査によると、大学生の52.5%が奨学金制度を利用していることが分かります。平成4年の受給率は22.4%なので20年間で奨学金受給率は2倍以上になり、年々増加していることが分かります。

ただ一方では、奨学金の返済が困難という事例もあります。パートやアルバイトなどの、非正規社員として働く人の増加がその背景にあるようです。正社員であっても、例えば病気で休職したり、思っていたよりも給料が上がらなかったり、女性の場合は出産で退職や勤務時間の短縮など、働き方に変化(=収入の変化)が生じることで、返済の負担が重くなるということも考えられます。

そういう世相を反映されてか、日本学生支援機構の奨学金を卒業後に返済をしていく際に、一定の収入に到達するまでは返済を猶予するという制度が、平成24年から始まっています。所得連動返還型無利子奨学金制度というもので、第一種の奨学金受給者であること、さらにその家計を支える者の(父母が共働きであれば父母の合計)所得が、会社員など給与所得の場合は年間300万円以下、自営業などの給与所得者以外は200万円以下などの所得制限があります。

教育資金は人生の3大資金のひとつであり、大きな費用がかかります。だからと言って、貯蓄では追いつかないという理由で諦めることは避けたいです。そのような時に教育ローンや奨学金は有効です。借りる場合には返済するということも意識して利用しましょう。

大澤 亜紀子

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