進学資金の支援制度が拡充されます
進学資金が足りないときに、頼りにしたいのが奨学金制度や授業料減免などの制度です。
代表的なのは日本学生支援機構の奨学金(給付型・貸与型)ですが、自治体や各大学、企業等にも奨学金制度や授業料減免制度が用意されている場合もあります。お子さんの進路希望がはっきりしてきて、用意すべき進学資金額が見えてきたら、資金不足の助けになる制度を、早めに確認しておきたいですね。
2024年度から、文部科学省は奨学金制度について3つの世代(大学生等・大学院生・社会人)を対象とした、奨学金制度等を利用しやすくする改正を予定しています。
1.大学学部生向け…対象者の拡大
2.大学院生(修士段階)向け…授業料後払い制度の創設
3.社会人向け…貸与型奨学金における減額返還制度の見直し
3つの改正内容を、確認してみましょう。
大学生等向け:支援対象者の拡大
日本学生支援機構の給付型奨学金(返済不要)の対象になると、大学・専門学校等の授業料・入学金も免除または減額されます(高等教育の修学支援新制度)。
進学資金が不足する学生・家庭にとって助かる制度ですが、給付型奨学金の対象となるための家計基準は、現在は「住民税非課税世帯及びそれに準ずる世帯の学生」に限られています。2024年度からは、一定の家計基準を満たし、「多子世帯(扶養する子が3人以上である世帯)の学生」「理工農系の学生」も支援対象になります。
文部科学省の「奨学金制度の改正(授業料免除等の中間層への拡大)に係るFAQ」によると、多子世帯支援の場合の支援額は、満額の1/4(たとえば、私立大学に自宅外から通う場合、授業用減免と給付型奨学金を併せて約40万円)となります。理工農系の学生への支援は、「人文社会科学系等の授業料平均との差額を支援」とのことです。なお、「多子世帯支援」と「理工農系支援」の両方に該当する場合は、原則として多子世帯支援が優先されます。
<国の高等教育の修学支援新制度の支援対象者と支援額の例>
モデルケース(父(給与所得者)、母(無収入)、本人(18歳)、中学生以下のきょうだい、の4人家族の場合
出典:日本学生支援機構 給付奨学金 高校生対象リーフレット
文部科学省 「こども未来戦略方針」の「加速化プラン」等に基づく高等教育費の負担軽減策について(令和6年度~)(PDF:501KB) 表は筆者作成
大学院生(修士段階)向け…授業料後払い制度の創設
大学院(修士段階)の授業料について、卒業後の所得に応じた「後払い」とする仕組みが創設されます。卒業後の納付は、本人の年収300万円程度から所得に応じた納付が始まることとされます。
さらに、子育て期の納付が過大とならないような配慮もされます。例えば、子どもが2人なら年収400万円程度までは所得に応じた納付は始まりません。
社会人向け…貸与型奨学金における減額返還制度・所得連動方式の見直し
日本学生支援機構の貸与型奨学金の返済(学生支援機構の場合は「返還」といいます)方法には、「定額返還方式(返還終了まで月々の返還額が同じ)」と「所得連動返還方式(毎月の返還額を所得に応じて毎年見直し)」があります。2024年度からは、この返還方法に関して、特に子育てに配慮した改正があります。
定額返還を利用していて、収入減などで返済が困難になった場合、条件を満たせば月々の返還額を減らす制度(返還総額は不変)が利用できますが、その利用要件等が見直されます。たとえば、現行制度では、本人年収325万円以下の場合に減額返還制度が利用できますが、この上限が400万円まで引き上げられます。子育て時期であれば、この上限はさらに引き上げられます。
所得連動返還方式の改正は、返還額の算定のための所得計算の際、子ども1人につき33万円の所得控除が上乗せされるというものです。その結果、算出される返還額は子どもがいないときよりも少なくなります。
このように、2024年度から進学資金等への国の支援策は拡充されます。
子どもが進路変更、志望校変更をすることもあるので、進学資金は余裕を持って準備しておきたいものです。コツコツ貯めた進学資金に加え、利用できる奨学金や授業料減免などの情報を集めて備えておきましょう。
参考:文部科学省 奨学金事業の充実