子どもマネー総合研究会

親として、持っておきたいお金の知識とは?

お金のことは学校で教えてくれません。

家庭では、どうでしょう。

きちんと教えている家庭もあると思うのですが、私の場合は特にお金の使い方を親に教わった記憶がありません。大学に入り親元を離れて暮らすようになったのをきっかけに家計簿をつけてみましたが、すぐに面倒でやめてしまいました。何にどれくらい遣ったかは覚えていないけれど、とりあえず次回の仕送りまでにマイナスにならなければいいや、という考えでした。 働くようになってからも「お金って知らない間にどんどんなくなっていくなー」と思いながらさほど危機感を感じてはいませんでした。貯蓄もしていたはずなのですが、旅行やら時計やら、欲しいものがあると簡単に取り崩してしまいなかなか貯まらない。今こんな仕事をしているのが信じられないくらいですが、自分には「やりくりの才能」がない、と開き直っていました。 そして妊娠・出産という収入の変動のタイミングもハラハラしながらなんとか切り抜けて来たものの、シングルマザーになるという人生の中で最大の危機(とそのときは思っていました)を迎え、やっと重い腰を上げてお金のお勉強を始めました。 そのとき、これを知っていて良かった!と思うことがありました。

不安に駆られた私はいきなりファイナンシャル・プランナーの資格のテキストを買って勉強を始めました。でも当時は用語の意味すらわからず、とりあえず順を追って勉強しようと最初のページに戻って読み返すと、プランニング概論のようなページに(確かだいたい)こんなことが書いてありました。

「以前の日本は標準的なモデル家庭が存在して、高度経済成長期の中で手厚い社会保障・企業保障があったので、自助努力の必要性がさほどなかった。多様な選択肢がある今は、起こりうる事態を想定して計画的に資金準備をしていくことが重要になる。」

そう、以前の日本は妻は結婚したら専業主婦に、夫はサラリーマンで定年まで年功序列で収入が上がり退職するとすぐに年金生活、なんていう「平均的」なライフスタイル、いわゆる「一億総中流」の意識があったので、その平均から著しく乖離していなければそんなに心配する必要がないだろう、という暗黙の安心感があったのではないでしょうか。今はライフイベントの時期や額も様々、社会保障も頼りないしこのままで将来大丈夫かしらと不安に思うのは、明確な指標がないからこそなんですね。まさに私の場合も、自分の状況がみんなと違うから不安、と思っていたことに気づきました。

では、実際にみんなと私はどう違うのだろう。今は漠然と食べていけるのかすら不安に思っているけれど、食べるのにいくらかかるの?食べる以外に何が必要?あまりに寒々しい暮らしは嫌だけど、贅沢をしたいわけじゃない。じゃあどんな生活を送りたいんだろう。子育ての費用や労力もプレッシャーだけれども、ひとり親が利用できるサポート(社会保障制度)はどんなものがあるだろう。もし私が病気になったら?子どもが将来進学したいと言ったら?そのために今から出来ることは?今のペースで難しければ、収入が少し上がったらできそう?収入を上げることは可能かな?

そうやってひとつひとつ不安の正体を明らかにしていくと、小さな調整を積み重ねることでなんとかなりそう、とこれからの生活を楽しみに思う気持ちが生まれました。ずっと先のことはわからないけれども、こうやって少しずつ調整していけば、きっとクリアできるんじゃない、と。私の場合、明らかに大変な状況になるまでお金のことをほったらかしにしてきましたが、だからこそ徹底的に向き合うことが出来たのかもしれません。

この仕事に出会って子育て中の方の話を伺うと、皆さん大なり小なり不安を抱えていることがわかります。これから先、ライフスタイルの多様化はどんどん進み、少子高齢化によって公的な保障や企業の保障もさらに縮小する傾向にあります。だからこそ未来を担う子どもたちの親として、あえて「お金」と向き合って欲しいと思います。自分らしい生活をこれからも送っていくためにはどれくらいのお金がかかるのか、現状のペースで問題がないかを考える。例えば貯蓄や収入アップで解決できる場合もありますし、ライフスタイルそのものを見直すことで安心につながる場合もあります。心のどこかでお金遣いすぎかなーと思っているときは実際に必要のない出費であることがほとんどです。今の満足感と地に足をつけた充足感とのバランスを、自分の価値観で考えてみましょう。活用できそうな国や自治体の制度も調べましょう。政治家を選ぶ権利を持つ私たちが制度の必要性を肌で感じることはとても大事なことです。家族の中でお金について話す習慣があると、子どもにも自然に価値観の軸が伝わります。

整理しても解決法がわからなければファイナンシャル・プランナーに相談するという選択肢もあります。その場合でも、ただ言われるがままではなく、きちんと理解できる提案をしてくれるプランナーを選びましょう。そして安心して毎日を過ごすためには、きちんとした政策を継続してくれる政治家を選ぶことも重要ですよね。

厳しい自己責任の時代と言われますが、主体的な生き方が出来る時代でもあります。お金に振り回されるのではなく自分らしく生きるためにも、お金と向き合って自分の価値観を育てましょう。そして子どもたちとその想いを共有できたなら、それはきっと明るい未来につながるのではないでしょうか。

波柴 純子

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